中学生が夏休みにヒッチハイクで一人旅に出た話

中学生がヒッチハイクで一人旅に出た話です。

旅に出るまでの経緯 中2の1学期

ヤンキーの生態調査

かくしてヤンキーになる決意をした僕だったが、肝心のなり方がわからない。 とりあえず、休み時間に勉強している沢勉に聞いてみた。 「沢勉、ヤンキーって、どうやったらなれるだ?」 塾の宿題を必死でこなしている沢勉には、 「知らんよ!そんなこと!ぼく…

中学校でヤンキーに出会った(改)

どうしてこうなってしまったんだろう。 途中までは、うまくいっていたのに。 僕は、小学生の頃から、何の取り柄もない、ごく普通の少年だった。 いや、どっちかというと冴えないヤツだったと思う。 勉強はテストで0点を取ったことがあるし、駆けっこはいつ…

夕焼けメリケンサッカー

「クソッタレ」 歩道橋の手すりに頬杖つきながら、つぶやいた。 変顔して人をおちょくる奴らのように、歪んだ夕日がこっちを見ている。 「なんだこのボケ。こっち見てんじゃねえ」 本当は、うっぷん晴らしに怒鳴り散らしたかったところだが、ここは通学路の…

猿岩石のヒッチハイク

それからというもの、学校へ行くのが苦痛で仕方がなかった。 学年が変わって、二年生になっても、状況は大して変わらなかった。 毎日、下校途中の歩道橋から、はるか遠くのどこかへ通じる国道一号線と、山の向こうへ沈んでゆく美しい夕焼けを見ては、 「この…

孤立

手は出していないとはいえ、松岡に対してあんな態度をとったのだから、それなりの制裁は覚悟していた。 ところが、あれ以来、何日経っても、肉体的には、とくに痛い目に合うことはなかった。 彼らも、陰湿なやり方でヤンキー社会の秩序を保つ事に慣れすぎて…

虎の威を借る狐

そんなある日、僕はいつになく真面目に国語の授業を受けていた。 その日の国語は漢文で、春秋戦国時代に書かれた『戦国策』の中の、「虎の威を借る」というエピソードをやっていた。 それは、こんな話だった。 虎は百獣の王だ。 彼は、他の獣を見れば、ただ…

何一つおもしろいこともない世界

実際のヤンキー社会は、マンガで読んだような男らしい世界ではなかった。 それどころか、みんな集団で行動していないと安心していられないような、臆病な奴らばかりだったのた。 すでに世襲によって序列が決定しているから、ケンカや抗争も起こらない。 とは…

ヤンキー貴族

半ツッパとしてヤンキーの仲間入りをしてから、松岡くんについていろいろなことがわかった。 僕らの中学校には、ヤンキー階級の中でも戦闘能力が最も高い5~6人の幹部だけが着用できる、「金ボタン」というものがあった。 ちょうど、ヤクザの世界で幹部組…

ヤンキー社会の階級制度

松岡くんに近づくことは、案外簡単だった。 彼がヤンキーであることは、既に明らかとなった。 そうであれば、おそらく彼も、ヤンキー漫画をいくつかは読んでいるにちがいない。 そこで、まずその辺の話題から振ってみることにした。 ある日の休み時間に、 「…

ヤンキーの正しいなり方

かくしてヤンキーになる決意をした僕だったが、肝心のなり方がわからない。 「そんなもん。勝手にぐれればいいじゃないか」 と思うだろうが、ひとりで突然ぐれたら問題だ。 そんなことをすれば、おそらく他のヤンキーから、 「生意気だ。」 「目立ってんじゃ…

中学校でヤンキーに出会った

僕が、ヒッチハイクの旅に出たのは、中学校での出来事がきっかけだった。 地方の公立の中学校ならどこでもそうなのかもしれないが、僕が通っていた中学も、ご多分に漏れず「荒れた」中学校だった。 入学してすぐのことだ。 1年生の教室に3年生の怖い先輩た…