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中学生が夏休みにヒッチハイクで一人旅に出た話

中学生がヒッチハイクで一人旅に出た話です。

ヤンキーの生態調査

旅に出るまでの経緯 中2の1学期
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かくしてヤンキーになる決意をした僕だったが、肝心のなり方がわからない。

 

とりあえず、休み時間に勉強している沢勉に聞いてみた。

 

「沢勉、ヤンキーって、どうやったらなれるだ?」

 

塾の宿題を必死でこなしている沢勉には、

 

「知らんよ!そんなこと!ぼくは勉強で忙しいんだよ!

 

こないだ塾を休んでショウくんのバカみたいな調べ物につき合わされたもんで、

 

宿題がたまって大変なんだ!

 

グレたきゃ、勝手にグレりゃあいいじゃんか」

 

と言われてしまった。

 

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「ちょっと待ってや。ひとりでグレるのは問題があるに」

 

「問題って何よ?」

 

「ひとりで勝手にグレたりしたら、

 

生意気だ!

 

目立ってんじゃネエ!

 

って速攻でケンカ売られて、ボコボコにされそうじゃんか」

 

「そりゃ、そうだらあ」

 

「これを全部倒せば、一躍ヤンキー界期待のルーキーだ。

 

だけん、俺はケンカなんてしたこんないし。

 

スポーツも得意じゃないし、多分そこまでの戦闘能力はないら」

 

「ショウくんは、ただのデブだもんね。」

 

「うるせえ。そしたらさあ、そんな危ない方法は取れんじゃん。

 

なるべく安全にヤンキーになりたいだもん、俺」

 

「知らんよ。もう、勉強するから、あっち行って!」

 

沢勉に突き放されて、仕方なくひとりで考えることにした。

 

どんな世界でも、その世界に入るためには、正当な手続きが必要だ。

 

それはヤンキーの世界とて例外ではあるまい。

 

こう思った僕は、まずヤンキーの世界に導いてくれるであろう水先案内人を探した。

 

休み時間の教室を見回して、クラスの皆を観察した。

 

すると、水先案内人になってくれそうな人は、すぐに見つかった。

 

制服を着崩し、普通とは少し変わった髪形をしている、リキヤくんという少年がいたのだ。

 

明らかにクラスの中では浮いた存在だった。

 

彼は、いつもけだるそうな顔をし、

 

椅子をシーソーのようにグラグラさせながら、

 

アホのような顔で授業を受けていた。

 

そして、たまに先生を茶化したり、

 

突然教室から出て、

 

ボケ老人のように校内を徘徊したりしていた。

 

僕がヤンキー漫画で得た情報をもとに判断すると、彼は、ヤンキーの一種だと思われる。

 

彼と仲良くなれば、ヤンキーになるための手続きの詳細を教えてくれるだろう。 

 

だが、いまひとつ確証が持てなかった。

 

話しかけてみて、ヤンキーではなかったら、彼はただの頭のおかしな人だ。

 

そんな人とは関わりたくないし、うかつに、

 

「ヤンキーになりたい」

 

なんて言ったら、こっちが白い目で見られかねない。

 

確証を得る必要がある。

 

そこで、僕は一計を案じた

  

当時、僕らのクラスでは、

 

「命令じゃんけん」

 

というものが流行っていた。

 

いわゆる

 

「王様ゲーム」

 

をじゃんけんでやるもので、

 

負けた人は、勝った人の命令に必ず従わなければならないという遊びだ。

 

僕は、これを利用して、リキヤくんが本物のヤンキーかどうか、確かめようと考えた。

 

まず、沢勉が休み時間に勉強していない日を選び、彼を誘った。

 

「沢勉、命令じゃんけんやろうぜ」

 

「えー、でも僕、そういうのやったことないでさあ」

 

「まあいいじゃんか。流行ってるみたいだし、ちょっとやって見よう」

 

「うーん。じゃあ、ちょっとだけ」

 

何とか、沢勉を命令じゃんけんに引きずり込むことには成功した。

 

あとは、じゃんけんに勝ちさえすれば、真面目な沢勉は命令どおりの行動をするに違いない。

 

仮にじゃんけんに負けても、気の弱い沢勉の命令なんて、タカが知れている。

 

さっそく、僕らはじゃんけんを始めた。

 

「じゃあ、いくぞ。命令じゃんけん、じゃんけんぽん!」

 

僕が出した手はチョキで、沢勉の手はパー。僕の勝ちだ。

 

「ああ!やられた」

 

「よっしゃ!」

 

「うええ、かんたんなのにしてよー」

 

「大丈夫、大丈夫。

 

じゃあ、命令するぞ。

 

あそこにリキヤくんがダルそうに座ってるだろ?

 

彼のところに言って、

 

『喧嘩上等』

 

と言って来るんだ。

 

ただし、命令されたってことは言っちゃだめだ」

 

僕が読んだヤンキー漫画では、ヤンキーの多くは

『喧嘩上等』

(「喧嘩をお売りくださるお客様には、それ相応のおもてなしをさせていただきます」の意)

 

をモットーとし、このフレーズに過剰に反応する。

 

売られた喧嘩に応じないことは、彼らのメンツに関わるらしい。

 

だから、もしリキヤくんが正当な(?)ヤンキーであれば、

 

必ず明白な反応を示すに違いない。

 

一緒にヤンキーの生態について調査した沢勉は、もちろん、そのことを知っている。

 

案の定、

 

「えええ!いやだよ!そんなこと言ったら、とんでもない目に合うじゃんか!」

 

と、頑なに命令を拒んだ。

 

しかし、なにがなんでも沢勉を命令に従わせなければ、この計画は失敗に終わる。

 

「命令じゃんけんに従わないってのか。

 

一度決めたルールを守らないなんて、それでも男かよ」

 

「そ、そんなこと言ったって、命令が無茶苦茶だら」

 

「沢勉は、いつも勉強ばっかりして、真面目そうにしてるくせに、

 

人との約束は守らないのか。

 

それじゃあ、ただのガリ勉じゃんか。

 

そんなの全然真面目じゃないし、かっこわる!」

 

「うう…。」

 

沢勉は、勉強が出来るだけに、勉強だけのガリ勉と見なされることを極端に嫌う。

 

僕は、そこにつけこんだ。

 

「ほら、早く。

 

やらないのかよ。

 

ほんとにただのガリ勉なんだなあ」

 

「わ、わかったよ。やるよ」

 

沢勉は、思いつめたような顔で言った。

 

「おおー、それでこそ沢勉。やってくれると思った」

 

こうして、沢勉はリキヤくんに

 

『喧嘩上等』

(「喧嘩をお売りくださるお客様には、それ相応のおもてなしをさせていただきます」の意)

 

を言ってくることになった。

 

そもそも、自分で試せばいいのに、人を使おうと言うのだから、一番男らしくないのは僕なのだ。

 

しかし、このときの僕のコンセプトは

 

「いかにして安全にヤンキーになるか」

 

なのだから、こればっかりはいたしかたがない。

 

自分の卑怯なやり方に、若干うしろめたさを感じながらも、

 

僕は、沢勉の勇敢な行動を見守った。

 

彼は、ビクビクおどおどしながら、おそるおそるリキヤくんに近づいていった。

 

だが、近くまでは行ったものの、なかなか声をかけようとしない。

 

何度も何度も、僕の方にアイコンタクトを送り、

 

「やっぱムリ!」

 

と、訴えてくる。

 

僕は、その訴えを華麗にスルーし、アゴをしゃくって彼を促した。

 

そうこうしているうちに、

 

クラスのアバズ…もとい女子と、下品な声を上げて談笑していたリキヤくんが、

 

沢勉に気づいた。

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そして、怪訝そうに、

 

「あんだよ」

 

と声をかけた。

 

突然、リキヤくんに話しかけられて、心の準備が出来ていなかった沢勉は、

 

「あうあうあう…」

 

と言葉にならない。

 

リキヤくんはいらいらして、

 

「なんか用かよ。言いたいことがあんなら、さっさと言えや」

 

と促す。

 

アバ…女子との会話を邪魔されて、リキヤくんはご機嫌斜めだ。

 

それでも沢勉は、

 

「あの…その…ええと…。」

 

と、しどろもどろだ。

 

その態度に、リキヤくんと話していたアバズレ(もういいや)が狂ったようにケタケタ笑う。

 

「やべー、なにコイツ。ちょーウケんだけど」

 

僕は、沢勉をバカにされて、

 

「うるせえわアバズレ。死ね!」

 

とイライラしながら小声でつぶやいて、

 

「沢勉、ガツンと言ってやれ!」

 

と遥かな安全圏から心の奥底で応援した。

 

そして、はっきりしない沢勉の態度に、業を煮やしたリキヤくんが、

 

「さっきから何だてめえ、おちょくってんのか!コラア!」

 

と怒鳴り散らしたその時、

 

「け、け、け、喧嘩上等~!」

 

ああ、なんて絶妙なタイミングで言ってくれたんだ沢勉。

 

完璧だよ。

 

君の死は無駄にはしない。

 

当然、リキヤくんは

 

「☆▼〇◇Ωξ♭√♂!!」

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と、我々一般人には理解できない難解な言語で激怒し、沢勉の胸ぐらをつかんだ。

 

この過剰反応は間違いない!

 

あいつこそ、我々が捜し求めていたヤンキーなる種族だ!

 

恐怖でパニックになりつつ、沢勉は持ち前の気の弱さと腰の低さを全力で発揮し、

 

「すいません!すいません!本当にすいません!」

 

と平謝りに謝り、なんとか無事に僕の所まで帰還した。

 

勇者沢勉の活躍により、リキヤくんがヤンキーであることは明白となった。

 

次は、いかにして彼に近づくかだ。