中学生が夏休みにヒッチハイクで一人旅に出た話

中学生がヒッチハイクで一人旅に出た話です。

中3の夏 旅日記 8月6日(金) 静岡県掛川市~神奈川県箱根町

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 ここからは、筆者が実際に中学生の時に旅をし、その時に書いた旅日記を、一切改変なく掲載していきます。

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 今回の旅立ちも、前回の旅と同じく、最初から雨にぶつかった。雨だとヒッチハイクがしにくいので、どうしようかと思っていたのだが、すぐに少し晴れてきたので、さっそく国道一号線で東京方面と書いたボードを掲げ、ヒッチハイク開始。

今回はしっかりしたスケッチブックをボードにしている。前回は、画用紙やダンボールの板などを使っていたが、まとまりがなく、持ち運びも不便だったので、スケッチブックにするとかなり楽になった。

 そして20分程すると、一台のワゴンをゲット!沼津まで乗せてくださると言う。

 ドライバーさんは、つま恋で働いているお兄さんで、つま恋の内部事情などを話してくれた。このお兄さんは一見おとなしそうな感じなのだが、ひっきりなしにしゃべるのでびっくりした。よくそんなにしゃべることがあるなぁと思うほどしゃべるのだ。

 大学の話や青春の話から、パチンコのテクニックの話まで、どうでもいいようなことをしゃべっていた。30秒と間が空いたことがなかった。ヒッチハイクをしていて話が途切れ、間が空くことはどうも気まずいものがあるので、こっちとしてはそのほうが楽なのだが、僕が今まで乗せていただいたドライバーさんの中で一番すごい話しっぷりだった。

 沼津のあたりまで行き、そろそろ降ろされるかなと思っていると、

「ついでだし、どうせ暇だし、箱根まで乗せてってやろう。」

と、ありがたいことをおっしゃってくれた。もちろん乗せていただく。そして箱根で降ろしてもらい、固く握手をして別れる。

 さぁ、そして箱根を観光しようと思ったら、雨が滝のように降っている。これでは観光どころではないと思ったが、このままただ通り過ぎるのはもったいないという気もしたので、一応、おみやげ屋さんを見て周り(見るだけ)、遊覧船にでも乗って芦ノ湖を回ろうと思ってチケット売り場に行ってみると、一番安い半周コースの2等船室でも1200円ぐらいだったが、まだ初日だし、まぁいいかと思ってチケットを買い、船に乗る。

 しかし、雨が土砂降りで景色が良いはずもなく、一応写真は撮ったが、すごく損した気分になった。

 そして、気を取り直し、小田原へ向けヒッチハイク開始!なぜ小田原かと言うと、ここより小田原へ出たほうが東京に行く車をつかまえやすいと地元の人に聞いたからだ。

 しかし、目の前を通り過ぎて行くのは品川ナンバーや練馬ナンバー。これなら東京方面のボードで一気に行けそうな気もしたが、家族連れで来ている乗用車が多いので、やはり小田原方面のボードを掲げる。

 すると、開始直後に一台の軽自動車をゲット!小田原までは行かないが、10分ぐらい先までなら乗せてくれると言う。だが、観光客だらけのこの場所にいてもしょうがないと思ったので、乗せていただくことにした。

 ドライバーさんは以前、袋井に住んでいたという40代ぐらいのおばさんだ。そして10分ぐらいたった所で降ろしてもらい、道を教えてもらうと、

「少しは歩きなさい。でないと痩せないわよ。」

と言われ、しばらく歩くことにした。

 一時間ほど山道を下って歩いていたら、突然バカでかいサイレンが聞こえ、消防車と救急車が走ってきた。

「なんだなんだ?」

と思い、それらの走っていく方向へ行くと、トラックとバスが事故を起こしていた。

トラックは運転席がペシャンコになり、中の人が外に出ることが出来ず、消防の人たちが必死で救助していた。僕は怖くなってその場を離れた。もしヒッチハイクをして車に乗っていたら、僕の乗っている車が事故っていたかもしれないし、事故っていなくてもこの大渋滞で何時間も足止めを食らっていたはずだ。あのおばさんの言うことを聞いていて良かった。

 それからずっと山道を下っている間、下の方にいる車の人に、

「ねぇ、上の方で何があったの?」

とか

「渋滞どのくらい続いてる?」

とか、20人ぐらいに聞かれた。一つ一つ答えるのは結構疲れた。

 この箱根の山道はどうやら事故が多いらしい。いたる所にお地蔵さんがあるし、グシャグシャになった車がそのまま放置されていたりした。中には崖を真っ逆さまに落ちた上体で放置されている車もあった。

 そして、しばらく歩いていると、ラーメン屋があった。看板には、

「テレビでおなじみの…うんぬん」

と書いてある。

「ほお、おなじみなのか。ではうまかろう。」

と思い、ちょうどメシを食っていなかったので、入ることにした。すると、店内には有名人のサイン色紙がたくさんあるではないか!こんな箱根の山中にこんなメジャーなラーメン屋があるとは!

 店はおばさんがやっていた。僕はチャーシューメンを頼むと、

「ここら辺は事故が多いんですか?」

と聞いた。するとおばさんは、

「いや、久々にキタよ。」

と答えた。

 最近はあまり事故がなかったようだ。ちょうど事故が起きた時に来てしまったなんて、ついてない。これでは車がつかまえられない。

 ところで、この店のチャーシューメンは、テレビに出るだけあってうまい!まず、素材からして違う。普通の店のチャーシューと違って、ここのチャーシューはしょっぱくなくて、固くなくて、口にこもる感じがなく、すっきりとした肉そのもののうまみがあった。そして分厚くてでっかい。メンもコシがあって良い。そして、問題の汁だが、これもうまい。少しこってり系なのだが、だからと言って油ギットギトではなく、さらりとした感じで口に入ってくる。そして、悪い油っぽさの場合、ふつう眉間がうずくのだが、この汁はうずかないので、良質のダシだとわかる。そして全部食べ終え、代金を払い、店を出てまた歩いた。

 合計四時間ぐらい歩いたと思う。渋滞していた車はたぶん、千台以上だと思う。途中で、やっとパトカーが来た。消防に比べて、警察の出動は遅いなあと思った。

 そして、やっと麓の町、湯本に着く。この町はその名のとおり温泉が多く、湯本温泉郷という、温泉旅館が集まって出来た町があるくらいだ。

 せっかくだから、僕も入浴することにした。900円も取られたが、初日なのでまあいいかと思い、入浴した。一日歩き疲れていたので、その気持ちよさは天にも昇る気分だった。

 そこで二人のおっちゃん達と仲良くなった。二人は平塚から来た人で、この店のサービスの悪さに激怒しておられた。

 そして、もう夜8時頃だったので、今夜の宿を探すことにした。すると、ちょうどグッドな宿を見つけた。駅の公衆便所である。水も飲めるし、用も足せる。そして洗濯も出来て、明るいし安全だ。

 そして、大便の部屋に入ろうと思ったら、段差があり、つまづいて転んでしまった。せっかく温泉に入ったのに、便所の水でびしょびしょになった。ウンコが落ちていなかったことがせめてもの救いだった。このトイレを作った奴に告ぐ、トイレに段差を作るな!

 そして気を取り直し、汚れた服を水道で洗い、洋式トイレの便座のフタをおろし、イスにして座り、洗濯物を壁に掛けて干して、今夜のお宿の出来上がり。しかし、変な酔っ払いとかが来て、オエオエ吐いていたので、うるさくて眠れなかった。